【代表弁護士必見】超速タスク管理術と効率アップのコツを徹底解説
「タスク管理がうまくいかない」
「もっと効率的にタスクを管理しないと、抜け漏れをなくせない」
既にタスク管理ツールをあれこれ試してみたものの、どれも上手く行かず、もはや収拾がつかなくなってきてしまっていると感じていませんか?
案件数が増えるほどに混乱の度合いを増す弁護士のタスク管理は、下図の流れで実施しましょう。
上図のようにタスク管理を行うことで、各自のタスクやその工数を事務所の全員が把握でき、連携して進められます。
では、なぜ連携を意識したタスク管理が必要なのか?
法律事務所で起こるトラブルの多くは、個人プレーに起因するからです。
・担当事務員への伝達ミスで、書類がまだ手つかず
・依頼者の自宅へは郵送不可の認識が共有されておらず、自宅宛に発送
・不在の事務員に代わってクライアントに連絡を取ったが、確認漏れ
業務上のトラブルのほとんどは、所内での連携ができていれば起こりません。
とはいえ、単に徹底的に情報共有して連携を図ればすべて上手く行くわけでもありません。
一人ひとりのキャパシティは異なります。
業務分担を最適化するところまで行わなければ、破綻してしまいます。
そこで本記事では、膨大な量のタスクを事務所内で横断的に管理するための方法と、タスク管理を効率化するコツをお伝えします。
具体的にご紹介していますので、お読みになってすぐに実践していただけるはずです。
真に効率的なタスク管理の実現に向け、ぜひご参考になさってください。
1. 弁護士のタスク管理(1)各弁護士の今のタスクのリストを作る
弁護士のタスク管理のはじめの一歩は、大きな括りでのタスクの洗い出しです。
どのようなタスクがどれだけあるのかを、まずは大まかに把握するためです。
各弁護士に、今抱えているタスクを一つ残らず書き出してもらいましょう。
下記のようなカテゴリー別に書き出すことで、見落としを防げます。
【タスクの書き出し例】
カテゴリー | タスク例 |
---|---|
来客対応 |
・初回相談 ・受任案件の依頼者やその関係者の応対 ・顧問先企業の関係者の応対 など |
メール |
・受信メールチェック ・依頼者への質問 など |
電話 |
・依頼者への進捗報告 ・裁判所から受けていた電話への回答 など |
外出 |
・現地調査 ・企業訪問 ・接見 ・研修 など |
調べ物 |
・判例・裁判例を当たる ・証拠資料に目を通す など |
書類作成 | ・訴状 ・釈放請求書 ・通知書・契約書 ・意見書 ・照会申出書 ・期日請書 など |
裁判・調停 |
・出廷 ・調停同席 ・民事裁判web会議参加 など |
事務所内打ち合わせ | 定例ミーティング など |
この段階では、どういった種類のタスクがどのくらいの密度で積み上がっているかを見るだけです。
準備や事後処理などまで含めたひとまとまりの業務として、ざっくりとリスト化すればOKです。
2. 弁護士のタスク管理(2)タスクを1作業ごとにさらに分解する
上記(1)で出したタスクを、今度は個別のアクションのレベルまで細かく分解して、書き出していきます。
大きな括りでのタスクを細分化する際は、他の誰かが見たときにすぐに取りかかれる具体的な個別アクションにまで落とし込むのがポイントです。
具体的には、5W1H(いつ、どこ、何、誰、なぜ、どのように)を踏まえて、ブレイクダウンします。
たとえば「依頼者Aさんとの初回相談」であれば、そこに内包される関連タスクを、以下のように書き出します。
相談前 |
・(自分)依頼内容確認 ・(自分)資料準備 |
---|---|
当日 | ・(自分)事務所で対面相談 |
相談後 |
・(事務員)受任後、書類作成および送付 ・(事務員)書類の返送がなければ、リマインドの電話 ・(事務員)受任事件としてExcelファイルに情報を登録 |
なお、書き出す際は、下記のルールに従いましょう。
【細分化したタスクを書き出すときのルール】
1. 事務員に依頼する分のタスクも書き出す(一連の作業を自身のタスクとして扱う) 2. 受任前でもタスクが発生すると想定して書き出す(新規相談の場合) 3. 数週間先、数ヶ月先のタスクでも一旦書き出す |
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ここでは「発生する可能性のあるタスク」まで含め、とにかく書き出します。
未確定だからと書き出さなかったタスクがいざ発生した場合、急遽対応しなくてはならなくなるため、時間にゆとりがなくなってしまうためです。
全てのタスクを書き出す作業は少々大変ですが、30分ほどで終わらせることを目標に取り組んでください。
弁護士全員がこの作業を行うことが難しければ、一部の弁護士で構いません。
その場合は、偏りを避けるため、できるだけ立場や担当分野が異なる弁護士数名を集めて行いましょう。
タスク粒度を揃えるのがポイント |
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タスク情報を所内全員で共有する前提で書き出す以上、粒度を揃えましょう。 一旦書き出したら他の弁護士の書き出した内容と比較して、粒度を揃えるために補正しましょう。 「他の誰かが見たときにすぐに取りかかれる」レベルに具体化するため、基本的にはより細分化されているほうに合わせます。 上記の初回相談の例でいえば、「準備+相談+事後処理」ともっと大まかな分解にとどまる弁護士もいるかもしれません。 |
3. 弁護士のタスク管理(3)それぞれのタスクの納期を明確に決める
タスクの細分化を終えたら、最小単位となった各タスクの納期を明確に決めていきます。
納期がない、あるいは曖昧な仕事は、どこまでもズルズルと先延ばししてしまうものです。
それを避けるためにはっきりとした納期を定めます。
明確な日時を指定できればそれを、日時指定できない場合(先方からのアクションを受け次第動く種類のタスク)は最低限のルールを決めます。
【明確な日時を指定する場合の例】 ・◯月△日までに東京家庭裁判所に訴状を提出する ・顧問先企業訪問日の前々日に当たる◇月☆日◯月△日までに資料を揃える 【最低限のルールを決める場合の例】 ・受任後「2営業日以内」に書類を作成・送付する ・調停期日が決定してから「1営業日以内」に依頼人に連絡する |
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なお、2つ以上のタスクの納期が重なってしまい、いずれかを優先しなくてはならない場合は、
・動かせない日程か否か
・緊急度
・タスク完了までに要する時間
などを考慮してそれぞれの納期を決めていきます。
大まかにいうと、原則として下記の優先順位で納期を確定していくことになるでしょう。
【最優先】 あらかじめ日時が決まっていて動かせないもの 例)裁判、依頼人との打ち合わせ 【2番目に優先】 緊急度が高いもの 例)勾留されている被疑者との接見 【3番目に優先】 期日が決まっているもの 例)訴状の作成・提出、第2回期日に向けた準備書面の提出 【4番目に優先】 上記「最優先」「2番目に優先」のタスクのために準備が必要なもの 例)依頼人Bさんの相談に関する判例を当たる 【5番目に優先】 期日はないが、緊急度がそこそこ高いもの 例)法改正に備え、提出法案を確認しておく 【最後】 期日はなく、緊急度も低いもの 例)所内メンバーでの勉強会開催を検討するための打ち合わせ |
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さほど時間のかからないタスクなら、他のタスクのついでに済ませてしまったほうが効率が良い場合もあるなど、ケースバイケースなところもありますので、最終的には実情を考え合わせて決めます。
4. 弁護士のタスク管理(4)タスクを時間軸上で捉え直す
納期を決めたら、次は各タスクを時間軸上で俯瞰できるように捉え直します。
簡単にいえば、
「3日後に相談があるから、その前日までには資料を準備しておく」
「さらにその1日前である前々日までには依頼内容を確認しておく」
といった逆算をしながら、大きな括りのタスク全体の中での各タスクの位置を確認します。(下図参照)
【3日後に初回相談がある場合の時間軸上での細分化】
大きな括りのタスク、その中に含まれる小さなタスクを1日・1週間・1ヶ月の単位で捉えることで、一連の流れを俯瞰することができ、着手タイミングなどのイメージがつきます。
気をつけたいのは、あくまで納期の視点から捉えなくてはならないということ。
各タスクの遂行にかかる時間だけで考えてしまうと、「この日は3時間空きがあるから、所要時間1時間のタスク2つと所要時間30分のタスク2つを入れよう」といった思考回路に陥ってしまうからです。
その考え方では、1日のうちにタスクを詰め込めるだけ詰め込んでしまい、結局何も管理できていないことになってしまうでしょう。
時間軸上での捉え直しということで、たとえば前述の「初回相談」の例であれば、以下のように書き出します。
一連の関連タスクの中での位置付けがわかると、いつ頃着手すべきかも自ずとわかってきます。
5. 弁護士のタスク管理(5)全員が共有できるツールに記載する
ここまでの作業で、優先度を考慮して納期が決められた状態の、粒度の揃った具体的なタスクが出揃いました。
イメージとしては、タスクを一つずつ書き込んだ付箋紙が何十枚も手元にある状況ですが、リアルに付箋紙で管理するのは(意外と今なお一般的な手法ではありますが)NGです。
所内の全員が共有できるデジタルツールを使い、出揃ったタスクをそこに入力していきます。
タスク管理ツールを利用してもよいですし、Googleスプレッドシートなどでチェックリストを作成してもよいでしょう。
難しく考える必要はありません。
必ず押さえておく必要があるポイントは、次の3つだけです。
【タスク管理用のツール選びのポイント】
押さえておくポイント | 理由 |
---|---|
所内の全員がリアルタイムに情報共有できる | 確実に最新情報を把握できる |
共同編集できる | 情報の参照先を1ヶ所に限定できる |
事務所外からもアクセスできる | 事務所にいなければ最新情報を確認できない状況では、業務効率が落ちる |
あるタスクが完了しているのか未完了なのかの現状を可視化することにより、万一担当者がやむを得ない事情で不在となってしまった場合にも、周囲がフォローすることができます。
なお、Googleスプレッドシートと似ていますが、タスク管理用のツールとしてExcelを利用するのはおすすめしません。
各自がMicrosoftクラウドサービスのアカウントを持った上で共同編集機能を使えば、リアルタイムに情報を共有できはするものの、「誰がいつ変更したか」の履歴を確認できないためです。
あらゆる情報を一気に可視化するならクラウドバランスがおすすめ タスク管理ツールは、基本的にタスクを管理するための機能にしぼったシンプルなツールです。 しかし、法律事務所に特化した案件管理システム クラウドバランスなら、タスク管理にまつわるあらゆる関連情報を案件に紐づけた状態で管理可能です。 ・電話履歴 ・対応履歴 ・チャット ・進捗状況 ・期限 ・預り金有無 など 「案件ごとの電子カルテを見れば全てがわかる」という究極の可視化が実現するため、圧倒的な業務効率化につながります。 |
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6. 弁護士のタスク管理(6)1日の朝礼と終礼で「今日のタスク」を報告する
ここまでで、タスクを見える化する仕組みは整いました。
しかし、それらのタスクが実際に遅滞なく遂行されなければ、せっかく構築した仕組みもなんの意味もなくなってしまいます。
そのために必要なのが、毎日の朝礼と終礼での報告です。
皆の前で宣言することで、やらなくてはという強い気持ちが芽生え、モチベーションが高まり、結果として目標を達成しやすくなるという「コミットメント効果」を利用するのです。
また、心理的な効果以外にも、あるタスクを予定通り完了できなかった理由を振り返ることで、業務上の改善点を見つけることにもつながるはずです。
「いくらチームワークといっても、個々のタスクの進捗を毎日報告させるというのは過剰な介入なのでは?」という意識は手放しましょう。
外出している弁護士が多く、朝礼や終礼の時間にメンバーが揃わないことが多い場合は、Zoomなどのオンライン会議システムを利用したり、チャットでの報告で代えてもよいでしょう。
【報告方法】
報告の場 | 報告すること | 目的 |
---|---|---|
朝礼 | 今日遂行する予定のタスク | 一人ひとりがコミットメントすることで、目標達成の動機付けを行う |
終礼 | 今日遂行できたタスクとできなかったタスク | 完了予定だったタスクが終わらなかった原因を確認し、改善につなげる |
なお、月曜日には週次で遂行するタスクのコミットメント、金曜日にはその振り返りも行いましょう。
その日その日で目の前のタスクを消化していくという姿勢ではなく、業務全体を意識してタスクに臨めます。
7. 弁護士のタスク管理を効率化するコツ
ここまで解説してきた弁護士のタスク管理の仕組み作りですが、残念ながら、この「タスクを管理する方法」だけを実践しても、結局続かないということになる可能性があります。
なぜなら、「業務のアサインの最適化」を行わなければ、誰かに過剰な負担を強いるようないびつなタスク管理となってしまうからです。
本章では、業務の最適化と、タスク管理をさらに効率的にする方法について解説します。
7-1. 各弁護士のキャパシティを理解して業務を充てる
各弁護士のキャパシティの違いを理解した上で、それぞれに適した量と性質の業務を割り振りましょう。
どれだけ完璧に管理されたタスクであっても、それを遂行するのは「人」であり、その本質を無視した運用を行っていては、何らかの形でしわ寄せが来てしまいます。
一人当たりの処理能力には限界があるのはもちろんのこと、同じ弁護士であってもキャパシティはそれぞれ違います。同時に、各人の持つ強みも異なります。
ここでご紹介したタスク管理法を実践すれば、全タスクが可視化され、各弁護士の担当業務量を把握できるようになります。
また、日々の朝礼と終礼での報告を通して、各弁護士の特性が見えてくるところもあるはずです。
一人ひとりに目を向けて、各自の現況と特性に応じた業務分担を実現できれば、タスク管理もより円滑となるでしょう。
7-2. 各弁護士の手持ち案件の最大数と最小数を決める
各弁護士の手持ち案件数の最大数と最小数を決めておくことで、タスク管理はさらに効率的となるでしょう。
限界まで詰め込めば生産性が上がるというわけではなく、最適化こそがタスク管理の効率を上げるために必要なことです。
完全にキャパオーバーとなってしまえば、どれほどシステマティックなタスク管理を行おうとも、回りません。
また、特定の誰かにタスクが集中してしまうという偏りもあれば、別の誰かは余裕がありすぎるという偏りもあり得るからです。
事務所全体としての受任案件数は一定ではありませんし、予定にない突発的なタスクが発生する可能性もあります。
忙しさの波も考えに入れ、職場全体のリソース量と仕事量を念頭に置きながら、手持ち案件数を決めましょう。
7-3. 法律事務所に特化した案件管理システムを導入する
さらなる効率化を望むのであれば、法律事務所に特化した案件管理システムを導入することをおすすめします。
タスクだけでなく、案件に関係するあらゆる情報を一元管理できるため、複数のツール間を行ったり来たりする必要もなくなり、法律事務所における業務全体の大幅な効率アップを実現できるからです。
タスク管理のみに特化したシンプルなツールは、無料で利用できるものもあり、確かに手軽です。
しかし、タスク以外の部分は他ツールで管理することとなって、「タスク管理はこのツール、電話履歴は電話連絡帳、顧客連絡先はあのリスト……」と情報が散在してしまい、作業効率が低下します。
専用ツールやExcelなどを使ったこうした運用は、案件数が増えれば増えるほど煩雑となり、抜け漏れも起こりやすくなるため、やがて限界に達してしまいます。
「登録情報が本当に最新かを確かめるために、別のツールも見に行くようにしている」
「案件数が増えて、Excelでの検索に最近やたらと時間がかかるようになった」
そんな状況なら、案件管理システムへの切り替えタイミングといえるでしょう。
切り替え後は、所内コミュニケーションまで含めた全情報が案件に紐づいた状態で管理され、タスク管理はそうしたシステムに備わっているタスク管理機能を利用して行う形となります。
法律事務所向けの案件管理システム選びのポイントについては、こちらの記事で詳しく解説していますので、ご参照ください。
8. まとめ
▼弁護士のタスク管理は、下記の流れで行います。
1. 各弁護士の今のタスクのリストを作る
2. タスクを1作業ごとにさらに分解する
3. それぞれのタスクの納期を明確に決める
4. タスクを時間軸上で捉え直す
5. 全員が共有できるツールに記載する
6. 1日の朝礼と終礼で「今日のタスク」を報告する
▼タスク管理を持続的かつ効率的に進めるための方法として、以下が挙げられます。
・各弁護士のキャパシティを理解して業務を充てる
・各弁護士の手持ち案件の最大数と最小数を決める
・法律事務所に特化した案件管理システムを導入する
特に、3つ目の「法律事務所に特化した案件管理システムを導入する」は、タスク、スケジュール、期限、進捗などあらゆる情報を一元管理することで大幅な業務効率アップを見込める手段です。
本記事が、弁護士のタスク管理の改善のお役に立てば幸いです。